三宅賞

大河内 直彦(Naohiko Ohkouchi)

・受賞理由

有機物と多次元同位体システマティクスによる化学指標開発と地球生命科学への応用

Development and applications of novel biogeochemical tools using organic matter and compound-specific isotope systematics

・主な業績

大河内博士は、多様な手法を組み合わせた有機物の統合的解析や、ナノモルレベルでの高感度同位体分析法を開発し、地球生命科学の特に次の3つの分野に大きく貢献した。1)バイオマーカーや安定同位体を用いた古海洋学・古環境学における貢献:アルケノン古水温計を高度化し、ポルフィリン古環境指標の開発による白亜紀海洋無酸素イベント時の海洋生態を解明した。2)化合物レベルの窒素同位体を用いた食物連鎖および生物地球化学への展開:アミノ酸の窒素同位体比による食物網解読手法の開発は、生態系研究にとって画期的なものであり、幼生ウナギの餌の解明など水産資源の維持を含む、陸上・水界両方の生態系理解を大きく進展させた。3)海底下地圏や初期地球における炭素循環解読への貢献:微生物によるメタン生成に関わる補酵素F430の高感度分析法を開発して深海掘削試料に適用し、海底下生命圏におけるメタン生成および、その動態解析法を確立した。これらの一連の研究は地球生命科学の分野において革新的な特筆すべき優れた研究である。

・推薦者

平 朝彦

・サポーター

横山祐典、⾼野 淑識