2.地球惑星科学5分野の夢ロードマップ



(3)地球人間圏科学の夢ロードマップ
   ~持続可能な日本、アジア、世界の実現への道~

21世紀前半のわが国における地球人間圏科学の最大の課題を、「持続可能な日本、アジア、世界の実現への貢献」と規定し、その達成度を地域・社会のサステナビリティ及び知識・情報の質・量・モビリティ等で決まる広い意味でのサイエンスレベルの向上により実現するという道筋を描いた。全期を以下の通り3期に分け、全期を通じてサイエンスレベルを押し上げる力として教育・研究により駆動される人・情報・知識の循環を掲げた。

(i)Phase I(2018年頃~2030年頃)

 2015年に国連総会決議において決議された『持続可能的な開発のためのアジェンダ2030 (SDGs)』は世界共通の課題として世界に共通する2030年までの目標を掲げている。この期間には2010に始まったICSU Global Challengeの成果から明らかとなりつつある地球人間圏が抱える諸問題の実態把握と改善の道筋をもとに、地球人間圏科学・教育の充実と世界的展開の流れを確実にする。また同時に進行しているFuture Earthの枠組みの中でも研究を推進する。さらに気候変動に関するパリ協定と防災に関わる仙台枠組みも地球人間圏科学にとって重要な目標である。具体的には以下の活動を進める。
  • ・地球・人間圏科学研究教育。情報ネットワーク充実:市民参加モニタリングネットワーク、グッドプラクティス発掘と推進、社会との協働・協創。
  • ・陸域持続可能性研究の充実:LUCC、土地・資源・エネルギー、都市・農村、水環境、環境保全、生態系保全、統合モデル研究、地球情報の充実。
  • ・沿岸・縁辺海域・海洋持続可能性研究の推進:陸域-縁辺海域システム、沿岸・縁辺海域利用、環境保全、生態系保全、海洋資源、汚染の浄化。
  • ・災害リスク統合研究の充実:気候変化影響、地震・津波、洪水、地形災害、火山災害等、旱魃・ゾド、学際領域での災害原因究明、データ統合、リスクの人間社会的側面、災害レジリエンス、社会連携。
  • ・地球情報・地理空間情報の整備・公開・可視化:地球人間圏の観測・モニタリング・予測、GIS、RS、オープンデータ、ビッグデータ、消えゆくデータの保全。

(ii)Phase II(2030年頃~2040年頃)

 Phase Iの成果を活かし、全人類的パートナーシップを確立し、持続可能な日本、アジア、世界への道を見出すことを目標とする。この時期、国際連合のSDGs等の目標やISC Future Earthが新たなフェイズを迎えるにせよ、別のプロジェクトとして発展するにせよ、人類の持続的発展のための国際協調が引き続き重要な目標であることに変わりはなく、前期と同様の枠組みのなかで研究が展開される。具体的には以下の活動を継続する。
  • ・超学際研究の体系化:地球人間圏科学研究・教育・情報ネットワークの充実と世界的展開。
  • ・陸域・沿岸・縁辺海域・海洋持続可能性研究の充実。
  • ・統合的災害リスクマネジメント研究・教育の充実と世界的展開:防災プラットフオ‐ム計画、グッドプラクティスの推進。
  • ・生物多様性と生態系保全の推進。
  • ・安心安全、豊かで誇りをもち暮らせる地球社会創造
  • ・Education for Sustainable Developmentの充実。
  • ・都市農村の相互依存社会の構築。

(iii)Phase III(2040年頃~2050年頃)

 Phase IIの成果を活かし、地球人間圏科学・教育の充実と世界的展開に努めるとともに、すべての人類の協和、英知の結集、地球環境倫理の確立を実現し、以下の目標を達成することに寄与する。
  • ・持続可能な世界にむけた生命観、自然観、世界観、地球人間圏科学の創出
  • ・統合的地球環境問題の克服:人口・食糧問題、土地・資源・エネルギー問題、温暖化問題、汚染縮小、災害克服、格差・貧困克服
  • ・地球人間圏科学の高度化
  • ・科学の果実の全人類的共有

 以上により、人と自然が調和した平和で持続可能な日本、アジア、世界を実現することに最大限の貢献をすることが、わが国の地球人間圏科学の「夢」である。



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