三宅賞

吉田 尚弘 (Naohiro Yoshida)

・受賞理由/Commendation

同位体置換分子種計測法の革新による大気化学的および生物地球化学的物質循環の研究の展開

Atmospheric chemistry and biogeochemical material cycles traced by innovative measurement of isotopic substituted molecules

・業績内容

 全ての元素は同位体の集合体であるように、全ての分子は同位体置換分子種(同位体分子と略称)の集合体であるが、ほとんどの同位体分子はまだ正確に測ることができない。吉田博士の主な研究業績は、様々な同位体分子の自然存在度を正確に計測する方法を開発し、その分子の起源を推定することで、地球環境、地球と生命の起源と進化の理解を深めてきたことである。無機分子の例としては一酸化二窒素の同位体比、同位体分子比を世界に先駆けて計測し、地球温暖化とオゾン層破壊に大きく関わること、その起源と将来予測などを明らかにした。低分子有機化合物の例としては炭化水素や低分子アミノ酸などの計測法を開発し、生物の代謝、地層中の生物・非生物分解過程、無機合成などバイオマーカーの起源とプロセスについて重要な発見をしている。また、計測法の開発に当たって新規世界標準を作成し、国際校正を主導するとともに、計測法の適用に当たっては実環境の観測や模擬実験などの国際共同研究をリードしている。これらの一連の研究は地球環境化学の分野において革新的な特筆すべき優れた研究である。

・推薦者/Nominator

豊田 栄