JpGUフェロー

和田 英太郎 (Eitaro Wada) 先生

・受賞理由/Commendation

地球表層における物質循環系の解明,および同位体生態学分野を構築した顕著な功績により

for outstanding contributions including elucidation of the mechanism of circulation of material at the Earth’s surface and contributions to the field of isotope ecology.

・経歴

昭和42年11月東京大学海洋研究所助手
昭和49年10月米国テキサス大学海洋研究所客員研究員
昭和51年4月三菱化成生命科学研究所室長
平成元年4月三菱化成生命科学研究所部長
平成3年7月京都大学生態学研究センター生態構造部門教授
平成8年4月京都大学生態学研究センターセンター長
平成13年4月総合地球環境学研究所研究部教授
平成16年8月海洋研究開発機構地球環境フロンテイア研究センタープログラムディレクター
平成23年12月海洋研究開発機構フェロー
平成23年12月水産総合研究センター中央水産研究所特別フェロー

・主要論文

  1. Wada, E. (1980) Nitrogen isotope fractionation and its significance in biogeochemical processes occurring in marine environments. In Isotope Marine Chemistry (eds. E. D. Goldberg, Y. Horibe, and K. Saruhashi), Uchida Rokkakudo, Tokyo, pp. 375-398.
  2. Minagawa, M. and Wada, E. (1984) Stepwise enrichment of 15N along food chains: Further evidence and the relation between δ15N and animal age. Geochimica et Cosmochimica Acta 48, 1135-1140.
  3. Wada, E. and Hattori, A. (1991) Nitrogen in the Sea: Forms, Abundances, and Rate Processes. CRC Press, Boca Raton, 208 p.
  4. Wada, E. and Yoshioka, T. (1995) Isotope biogeochemistry of several aquatic ecosystems. Geochemistry International, 32, 121-140.
  5. Wada, E. (2009) Stable δ15N and δ13C isotope ratios in aquatic ecosystems. Proceedings of Japan Academy, Ser. B, 85, 98-107.

・主な業績 Major achievements (in Japanese)

和田英太郎氏は,窒素・炭素安定同位体比に関する基礎過程と,それに基づく地球表層における物質循環系の解明に大きく貢献された。世界に先駆けて海洋に分布する様々な物質の窒素同位体比を測定し,海洋窒素循環に関する生物地球化学的な応用研究の先鞭をつけられた。物質循環に関わる基礎的なプロセスの同位体効果を実験的に解明し,これを実際の海洋や湖沼に適用する応用研究手法は,窒素・炭素の物質循環像の確立に広く貢献した。また,窒素同位体比が食物連鎖に沿って一定の比率で高くなることを見いだし,同位体生態学の基礎を確立された。これは,捕食―被食というマクロなプロセスを化学シグナルとして捉えることを可能にした画期的な方法論である。さらに同氏は1990年代以降,多数の大型プロジェクトを推進,流域生態系の物質循環と生態系変化との連環を解明する新しい方法論を提唱すると共に,科学の成果を社会の順応的流域管理に繋げる方向を提示した。

推薦者/Nominator

大河内直彦