中村 尚(Hisashi Nakamura)先生
・受賞理由/Commendation
大気大循環系と大気海洋相互作用の理解、及び気候変動の社会影響に関する知見の普及への顕著な貢献により
For outstanding contributions to understanding of atmospheric circulation systems and air-sea interactions, and disseminating knowledge on social impacts of climate change
・経歴
1990年 同大学大気海洋共同研究施設 博士研究員
1991年 Princeton大学大気海洋科学プログラム 博士研究員(1993年8 月迄)
1992年 東京大学理学部地球惑星物理学科 助手
2000年 同大学理学系研究科地球惑星科学専攻 助教授・准教授
2011年 同研究科地球惑星科学専攻教授
2011年~現在 同大学先端科学技術研究センター教授
1997~2009年:海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センターグループ長(兼任)
2009~2011年:海洋研究開発機構地球変動領域 招聘主任研究員(兼任)
2012年~現在:海洋研究開発機構アプリケーションラボ 招聘上席研究員(兼任)
・主要論文
- H. Nakamura, T. Sampe, A. Goto, W. Ohfuchi, S.-P. Xie: On the importance of midlatitude oceanicfrontal zones for the mean state and dominant variability in the tropospheric circulation, Geophys. Res. Lett., 35(15), L15709, doi:10.1029/2008GL034010, 2008.
- K. Takaya, H. Nakamura: Mechanisms of intraseasonal amplification of the cold Siberian High. J. Atmos. Sci., 62(12), 4423-4440, 2005.
- K. Takaya, H. Nakamura: A formulation of a phase-independent wave-activity flux of stationary and migratory quasi-geostrophic eddies on a zonally-varying basic flow. J. Atmos. Sci., 58(6), 608-627,2001.
- H. Nakamura, G. Lin, T. Yamagata: Decadal climate variability in the North Pacific during the recentdecades. Bull. Amer. Meteor. Soc., 78(10), 2215-2225, 1997.
- H. Nakamura: Midwinter suppression of baroclinic wave activity in the Pacific. J. Atmos. Sci., 49(17),1629-1642, 1992.
・主な業績
日々の天気や偏西風の形成に影響する中緯度の移動性高低気圧の活動度の変動、中高緯度域の異常気象の主因となるブロッキング高気圧、大気の遠隔影響等、多様な大気変動の形成・維持メカニズムの理解を深化させた。また、停滞性ロスビー波のエネルギー伝播の診断法の定式化により、世界的な大気変動研究の発展に大きく貢献した。特に、中緯度海洋は熱帯からの遠隔影響を含む大気変動に受動的に応答するだけであるという定説に挑戦し、「気候系の形成と変動に中緯度海洋が能動的役割を果たす」という新パラダイムを着想して研究を主導し、「中緯度大気海洋相互作用」という新たな研究領域を開拓した。また、日本の異常気象の要因分析を主導し、近年の豪雨や猛暑の事例への地球温暖化の影響を広く社会に発信している。このように、気候力学及び大気循環力学の分野で顕著な研究業績を挙げた。また、広く地球惑星科学の発展や国際連携の推進にも顕著な貢献をした。
・推薦者
野中 正見