⾚祖⽗俊⼀先生

⾚祖⽗俊⼀(Syun-Ichi Akasofu)先生

・受賞理由

地球惑星科学、特に磁気圏擾乱(サブストーム/オーロラ嵐)に関する先駆的で傑出した研究業績、および太陽地球系物理学の発展に尽⼒した著しい功績により

For pioneering and outstanding achievements in Earth and planetary science in particular for deepening our understanding of magnetospheric disturbances including substorms and auroralstorms, and for internationally recognized contributions to the development of solar terrestrial physics.

・経歴

  • 長野県出身。旧制岩村⽥中学校(現:岩村田高等学校)。旧制松本高等学校(現:信州大学)。東北大学卒業。1961年アラスカ大学PhD。
    1964: アラスカ大学地球物理研究所 教授
    1986 -1999: アラスカ大学地球物理研究所 所長
    1998-現在: アラスカ大学国際北極圏研究センター ディレクター
    2000-2007: アラスカ大学国際北極圏研究センター 所長

・主要論文

  • Akasofu, S.-I., The Development of the auroral substorm. Planetary and Space Science,12(4), 273-282, 1964, http://dx.doi.org/10.1016/0032-0633(64)90151-5
  • Akasofu, S.-I. and S. Chapman, Solar-Terrestrial Physics, Clarendon Press, Oxford, England, 1972.
  • Akasofu, S.-I., Physics of Magnetospheric Substorms, D. Reidel, Pub. Co., Dordrecht, Holland, 1977.
  • Akasofu, S.-I., Energy coupling between the Solar-wind and the magnetosphere, Space Science Reviews, 28(2), 1981.
  • Akasofu, S.-I., Auroral substorms as an electrical discharge phenomenon, Progress in Earth and Planetary Science, 2, 2015, http://dx.doi.org/10.1186/s40645-015-0050-9

・主な業績

赤祖父俊⼀博士は、アラスカ大学地球物理学研究所および国際北極圏研究センターにおいて、太陽風̶磁気圏̶電離圏相互作用、磁気嵐、サブストーム(オーロラ嵐)の分野を先導する研究を⾏い、北極圏環境研究分野で数多くの業績をあげてこられた。なかでも、詳細な観測に基づいて、赤祖父博士が明らかにした緯度・地方時に強く依存して変化するオーロラ形態モデルは、その後のオーロラ研究における標準モデルとなっている。さらに、赤祖父博士は、衛星・地上の観測データを解析し、サブストームが太陽風磁気圏相互作用によりつくられるダイナモが生成する電磁気エネルギーが駆動するDD(Directly Driven)現象であることを示した。サブストームの基本過程が電磁気エネルギーの消費(UL:Unloading)であることを示した本論文は、多数の研究者により引用されている。その後、赤祖父博士は、サブストームの基本過程をDD電流回路とUL電流回路で構成される電流回路として整理し、その発達と衰退を説明している。赤祖父博士のサブストームの概念の確立や、太陽地球間空間に生起する諸現象の総合的体系化の功績は多大である。 赤祖父博士の研究成果は、550編を超える論文と11冊の著書・編著として公表され、個⼈の研究成果にとどまらず、世界のサブストーム研究の草創期から現在に⾄る大きな流れを形成すると共に、将来のサブストーム研究の主要な方向をも示していることは、太陽地球系物理学分野での巨大な金字塔ともいえる。その業績に対して、1976年にイギリス王立天文学会よりチャップマン・メダルを授与され、アメリカ地球物理学連合よりフェロー(1977年)の称号およびジョン・フレミングメダル(1979年)を、欧州地球科学連合よりハネス・アルヴェーン賞(2011年)を授与された。我国においても、その功績により、日本学士院賞(磁気圏擾乱の研究)を受賞され(1977 年)、外務大臣賞(1993年)、郵政大臣賞(1996年)を受賞されている。1985年には、昭和天皇にオーロラに関するご進講をおこなっており、2003 年には勲⼆等瑞宝章を授与された。また赤祖父博士は、アラスカ大学地球物理学研究所教授(1964-1986)、同研究所所長(1986−1999)、国際北極圏研究センター所長(1999-2007)として、長年にわたりオーロラ物理学分野と北極圏研究の発展、そして研究者の育成に貢献された。

・推薦者

菊池 崇 (名古屋大学宇宙地球環境研究所・名誉教授)