眞鍋淑郎先生

眞鍋淑郎(Syukuro Manabe)先生

・受賞理由

地球物理学分野、特に気候モデル研究における先駆的で傑出した業績と気象変動予測への著しい功績により

For pioneering and outstanding achievements in geophysics, in particular the development ofphysical models of the Earth’s climate and for internationally recognized contributions to the prediction of climate change.

・経歴

  • 愛媛県出⾝。旧制三島中学校卒業。東京大学卒業。1958年東京大学理学博⼠。
    1958-1963: 米国気象局大気循環研究部⾨ 気象研究者
    1963-1997: 米国大気海洋庁地球流体力学研究所 シニア気象研究員
    1968-1997: 米国プリンストン大学大気海洋プログラム 教授待遇講師
    1997-2002: 地球フロンティア研究システム 地球温暖化予測研究領域 領域⻑
    2002-2003: 米国プリンストン大学大気海洋プログラム 客員研究協⼒者
    2005- 米国プリンストン大学大気海洋プログラム シニア気象学者

・主要論文

  • Syukuro Manabe and Robert F. Strickler (1964) “Thermal Equilibrium of the Atmosphere with a Convective Adjustment.” Journal of the Atmospheric Sciences, 21, 361–385. DOI: https://doi.org/10.1175/1520-0469(1964)021<0361:TEOTAW>2.0.CO;2
  • Syukuro Manabe, Joseph Smagorinsky, and Robert F. Strickler (1965) “Simulated Climatology Of A General Circulation Model With A Hydrologic Cycle.” Monthly Weather Review, 93, 769–798. DOI: https://doi.org/10.1175/1520-0493(1965)093<0769:SCOAGC>2.3.CO;2
  • Syukuro Manabe and Richard T. Wetherald (1967) “Thermal Equilibrium of the Atmosphere with a Given Distribution of Relative Humidity.” Journal of the Atmospheric Sciences, 24, 241–259. DOI: https://doi.org/10.1175/1520-0469(1967)024<0241:TEOTAW>2.0.CO;2
  • Syukuro Manabe (1969) “Climate and the Ocean Circulation I. The Atmospheric Circulation and the Hydrology of the Earth’s Surface.” Monthly Weather Review, 97, 739–774. DOI: https://doi.org/10.1175/1520-0493(1969)097<0739:CATOC>2.3.CO;2
  • Syukuro Manabe and Ronald J. Stouffer (1993) “Century-scale effects of increased atmospheric C02 on the ocean–atmosphere system.” Nature, 364, 215–218.

・主な業績

眞鍋淑郎博士は、世界に先駆けて大気海洋結合大循環モデル (AOGCM) を開発し、信頼のおける定量的結果を導く気候変動予測研究の礎を築いた。眞鍋博士はまず鉛直1次元数値モデルを用いることにより、観測された大気の鉛直分布の再現に成功し、「大気の放射対流平衡」という概念を世界で初めて定量的に気候⼒学に導⼊した。1967 年には大気のCO2濃度を2倍もしくは1/2倍にしたときに地上気温がそれぞれ2.36℃上昇もしくは2.28℃低下することを示し、2倍時においては、⽔蒸気による温室効果が加わるという正のフィードバックの存在を明らかにした。これは、⼈間活動に伴う温暖化の予測において、多様な要因に対する気候感度を調べることの重要性を示した最初の研究である。また眞鍋博士は、AOGCMを用いて、ジェット気流から地表に⾄る全球的な気候の特徴を再現することにも世界で初めて成功している。同博士は、⽔文過程を簡略化したバケツモデルや、大気-海洋間の熱のやりとりを調整するフラックス調整を⾏うモデルを導⼊するなど、限られた計算機資源のなかで本質を抽出しながら詳細部分を大胆に簡略化するスタイルで、長年に渡って気候システムの振る舞いを明らかにする最先端の基礎研究を続けてこられた。現在の気候変動予測のさきがけとなるその多大な功績は、2021年にノーベル物理学賞を受賞したことで示されている。眞鍋博士は、1958 年に東京大学で博士号を取得した後、ワシントンDC にあった⽶国気象局で働き始め、1963年からプリンストン大学にある⽶国海洋大気庁(NOAA)地球流体⼒学研究所(GFDL)で、上級気象研究員として、長らく、気候モデルの開発、および、それを用いた気候変動による将来予測などの気候システムの解明に先駆的に取り組み、その功績により、1966年に日本気象学会 藤原賞、American Meteorological Societyから1967 年にMeisinger Award、1987 年に2nd Half Century Award、1992 年にRossby Medalを授与され、European Geophysical Societyから1998年にMilankovitch Medalを、American Geophysical Unionから1993年Revelle Medal、2010年Bowie Medal、Franklin Instituteから、2015 年にBenjamin Franklin Medal、BBVA Foundation から2016 年に Frontiers of Knowledge Awards、Royal Swedish Academy of Sciencesから2018年にCrafoord Prize を授与されるなど、多数のメダルや栄誉ある賞を受賞されている。学術団体等においては、1967年にAmerican Geophysical Union Fellow, 1990年にNational Academy of Sciences, USA Member、 1994年Academia Europaea Foreign Member、1995年Royal Society of Canada Foreign Member、1997 年American Meteorological Society Honorary Member および、American Association for the Advancement of Science Fellow、2000年には日本気象学会名誉会員、2006年にRoyal Meteorological Society Honorary Member、2009年には日本学士院客員、2021年日本学術会議栄誉会員等の称号を授与されている。

・推薦者

山中康裕