三宅賞

・受賞理由/Commendation

超高圧下における地球惑星物質（特にメルト）の物理的・化学的性質

Physical and chemical properties of Earth and planetary materials (particularly melts) under ultra-high pressures

・業績内容

　マントル遷移層に及ぶ超高圧下でのケイ酸塩鉱物の融解実験を世界に先駆けて行い，初期地球の深いマグマオーシャン内部での結晶分化作用のモデルを提案した。また、浮沈法や放射光を用いた透過法などマグマの密度と粘性の測定方法を開発実用化した．この方法を用いてマグマの密度を推定し，核マントル境界条件で結晶より重いマグマが存在することを予測した．さらに，密度に対するH₂OおよびCO₂の影響を解明し，マントル遷移層の最上部に重いマグマが存在することを示した．高温高圧下で安定な含水ケイ酸塩鉱物を発見し，これらが地球深部における水の貯蔵と循環に重要であることを示した．また，マントルの相転移境界に与える水の影響を明らかにした．
　金属鉄・軽元素系の溶融関係や金属鉄とケイ酸塩間の元素分配実験を行い，核マントル境界において、多量の酸素とケイ素が溶融金属鉄に溶け込むことを示した．また、放射光Ｘ線非弾性散乱法によって鉄軽元素合金の地震波速度を測定し，内核の組成を推定した．さらに，隕石の衝撃溶融脈の研究を行い，月隕石からシリカの高圧多形，火星隕石から橄欖石のブリッジマナイトとフェロペリクレースへの分解を発見し，それらの組織から衝突の規模・条件（衝突天体の大きさ，衝突速度など）を推定した．

・推薦者

中村美千彦 (Michihiko Nakamura)