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セクションサイエンスボード −大気海洋・環境科学セクション


大気海洋・環境科学分野の現状とビジョン
はじめに
大気海洋・環境科学セクションは、われわれが棲んでいる陸域表層と大気、そして生命の源である海など、我々にとってもっとも身近な地球表層系を扱う研究を振興することを目指す。この分野には、気象災害や地球環境問題など、生活に密接した大切な問題が多く含まれており、現象の理解とそのモデリングは非常に重要である。そのため、大気や海洋、自然環境に関わるそれぞれの研究は、すでに気象学会や海洋学会をはじめとする長い歴史を有する個々の学会において扱われてきた。しかし、我々の理解が深まるにつれて、サブシステム(大気、海洋、陸域表層)間の相互作用の理解や複雑系としての問題把握などが新しい焦眉の課題になってきた。このような状況のもとで、本課題を地球惑星科学の中できちんと位置づけて議論することが非常に有効である。このような理念のもとに、多くの研究者と学生が連合のもとに結集して、新しい次元の連携と切磋琢磨をすることが求められている。

さまざまな研究分野
大気、海洋、陸域表層は互いに強い相互作用を行っている多圏複合システムである。したがって本セクションで扱う地球表層系の研究分野は非常に広範である。そこには、各サブシステムで営まれている物理、化学、生物にかかわる素過程の研究が含まれる。さらに、それらが組み合わされたシステムとしての気候、水循環、物質循環、生態系などに関わる研究も重要である。また、これらを人間を取り巻く「自然環境」としてとらえる研究も近年大きく発達してきた。
地球表層系の状態は日々大きく変動し、季節変化や経年変化を初めとするさまざまな時間スケールの変化現象を伴っている。これらの変化を明らかにし、そのなかに見られる時空間的な特徴(気候状態)を把握する必要がある。このような気候システムは、太陽放射と地球放射のエネルギー収支によって駆動されており、大きな緯度依存性を伴っている。このような熱帯域から極域までのさまざまな気候状態の形成と変動に関わるメカニズムを理解しなければならない。そのためには、系の物理化学特性と各サブシステムのなかで起こる内部場の組織化や擾乱などの過程を把握する必要がある。さらに、このような系の特性が系のエネルギー収支をどのように決定するかを知らなければならない。特に、大気においては大気大循環や対流現象、雲などの役割、海洋においては熱塩循環や海洋渦の役割を理解する必要がある。陸域においても地表面状態の変化の把握と、これらの変化が大気と海洋とどのように相互作用するかを把握する必要がある。雪氷圏の変化を理解することは地球の気候感度を把握するうえで重要である。
このような研究を通して、自然起源と人為起源の外力に対する各サブシステムの応答や、サブシステムの自励的な変動、サブシステム間の相互作用メカニズムを把握する必要がある。近年では、人間活動による地球温暖化、大気汚染、海洋汚染、砂漠化、生態系変動などが懸念されており、これらの研究が重要になってきている。地球史の時間スケールではさらに様々な変動メカニズムが存在するが、その把握が必要である。このような地球史と古気候の研究は、現在や将来の地球表層系の理解にも役立つ。例えば、氷期・間氷期サイクルの理解は、現在問題となっている温暖化の将来予測、特に雪氷圏の応答を理解する上で重要である。
大気海洋・環境科学に関わる研究の特殊性は、以上のような研究が、自然現象自体の理解のためだけでなく、様々な環境問題に対応するためにも必要とされる点である。持続社会の実現とその将来予測のために、大気海洋科学の担う役割がますます重要になっている。このような社会ニーズにも支えられ、本セクションで取り扱う研究分野は急速に拡大している。また防災など社会基盤の設計に深く関わる研究も、自然科学の知見をますます吸収して発達しており、理工、社会系の研究の融合が進んでいる。このような応用的研究に関わる重要な点は、本セクションが扱う地球表層系の現象が、非常に多くの観測とモデリングの研究によって、他のセクションが扱う問題に比べて格段に深く理解されていることである。そのため、その知見を利用する社会ニーズも高度になりつつあり、サブシステム間の相互作用を無視してはニーズに対応できないレベルになりつつある。このような研究の進展を背景に、個々の現象のより良い理解と問題解決のために、個々のサブシステムを大きく超えた「地球システム」全体を捉える研究が発展しつつある。その意味では,理学と工学、人間圏、社会経済に関わる接点も重要になってきており、地球システム科学パートナーシップ(ESSP)などに象徴されるような多圏複合的な研究をますます推進する必要がある。
大気海洋科学の研究を支えるためには、現象をミクロからマクロまでシームレスに捉えるための、過去データの復元、現場観測、衛星観測をさらに発展させる必要がある。また、得られたデータを定量的に理解するためのモデリング研究、データ同化技術、そして、それらを支える大規模計算機技術の発達が必要である。我が国では、地球シミュレータの開発を契機に温暖化現象の研究を初めとする気候モデリングの発展が著しく、超高解像度の全球非静力大気モデルのような世界的をリードする研究が生まれている。このような我が国が得意とする計算科学・技術に根ざした大気海洋科学研究は今後も大きく発展するポテンシャルを持っている。しかし今後はさらに、比較的脆弱な観測的研究および、そららをモデルに取り込むデータ解析研究を増進する必要がある。  
地球表層系はそれが孤立して存在しているのではなく、表層系を支える地球固体、そのなかではぐくまれる生命・人間、それを包括する惑星系に対して開いている系であるので、必然的に連合を構成する他のセクション(宇宙惑星科学、地球人間圏科学、 固体地球科学、地球生命科学)との連携が非常に重要である。

セクションの活動
本セクションにおいて、その研究の振興を実現するには次のような活動が重要である。
・研究交流の場の確保: 大気と海洋を含む地球表層系とそれを自然環境としてとらえた様々な研究を発表する場を提供すること。同時にこれらの様々な研究間の交流を通して、地球表層系をシステムとして理解する研究を醸成する。連合大会において魅力あるセクションを構成すると同時に、様々な機会をとらえて国内外の研究交流の場の設定と参画をおこなう。
・良い研究環境の創出: 個々の研究者が独創的で高度な研究を推進したり、関係する社会の様々な部分がこれらの知見の波及効果を生み出す環境を作る必要がある。自立した研究者と、次世代を担う若手や学生が生き生きと活動できる場を作り出すことが必要である。特に、近年のポスドク問題などを軽減し、若手が自立した研究者として育ってゆくための環境を作らなければならない。
・表層系研究の知識アーカイブの創出: すでに情報発信は新しい時代に突入しており、電子媒体を使った地球表層系の研究成果の迅速な発信と、誰でもが自由に閲覧できる場の確保が重要である。そのために、多国籍の研究者の間の様々な情報交換手段(電子ジャーナル、研究資料アーカイブ、フォーラム)を提供することが必要である。
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