日本学術会議(第20期第1回)地球惑星科学委員会 社会貢献分科会 議事録

                     

1.日時 平成19年3月23日 (金)14:00〜16:00

2.場所 日本学術会議6階 6-A(1)会議室

3.出席者(敬称略)

 委員:平朝彦,碓井照子,大久保泰邦,斎藤靖二,高橋桂子,滝沢由美子,田村俊和,

     野上道男,浜野洋三,圦本尚義,渡邊眞紀子
 オブザーバー:富樫茂子(産業技術総合研究所)
 日本地球惑星科学連合:阿部国広(川崎私立西有馬小学校),中井睦美(大東文化大),

                        根本泰雄(大阪市立大) 
 欠席委員:安仁屋政武,岡田尚武,小野有五,松岡俊文,的川泰宣,千木良雅弘
 事務局:佐野和子

3.議事次第

 報告事項

1) 日本学術会議の最近の動向と地球惑星科学委員会の活動について(入倉)
2) 本分科会の設置経緯と目的について(平)

 審議事項

1) 副委員長と幹事の選出について
2) 本分科会の今後の進め方について
3) 学協会、とくに日本地球惑星科学連合との連携について

 配布資料

  資料1.地球惑星科学分科会の設置について−社会貢献分科会−
資料2.地球惑星科学委員会社会貢献分科会名簿
資料3.19期の“社会貢献”提言リスト
資料4.学会ごとの女性会員の比率
資料5.女性研究者の比率(2005年版男女参画白書)
資料6.連合男女共同参画委員会設立趣旨
資料7.連合男女共同参画委員会シンポジウムポスター
資料8.中学校学習指導要領−理科
資料9.連合からの理科教育シンポ提案
資料10.理数科教育問題
資料11.提言「すべての児童・生徒が地球人としての科学リテラシーを身につけるために−」
資料12.科学リテラシーについて
資料13.理数系学会連合会関連資料(議事録及び名簿)
資料14.連合大会一般公開プログラム一覧
資料15.2006年大会高校生ポスター発表セッション
資料16.連合国際地学オリンピック委員会活動資料(議事録)
冊子.提言「すべての高校生が学ぶべき地球人の科学リテラシー」
冊子.その他 連合科学情報誌 JGL最新号
参考資料.最近の理科の本
追加資料.日本学術会議の最近の動向と地球惑星科学委員会の活動について
 

 

4.議事録(案)

1.

開会[平]

2.

自己紹介[全員]
3. 報告事項  
  1)日本学術会議の最近の動向と地球惑星科学委員会の活動について(入倉)

入倉委員より標記の件について説明がなされた。(追加資料)
○今期中の活動予定
・去年から全国20箇所によりサイエンス・カフェを開始した。
・科学者の不正問題について科学者の行動規範の報告書を提出した。
・SCJ憲章作成のため、今後当分科会にもコメントをもとめる予定。
○第3部としての活動
・最近設置された人材育成問題検討分科会では、ポスドク問題や若手研究者の減少について検討しているので、連携会員で詳しい方がいたら是非参加してほしい。
・理科離れについて学術会議としての組織的提言はなく、分析は進んでいるが効果的なactionが取れていない状況。
○地球惑星科学委員会の活動
・地球惑星科学推進分科会の具体策を検討するための分科会として当社会貢献分科会を設置した。
 
  2)本分科会の設置経緯と目的について(平)

平委員長より標記の件について説明がなされた。(資料1)
・ 当分科会は、提言だけでなく学協会と連携し具体的なactionを行う。
・ 学協会が学術会を利用して活動の幅を広げられるような仕組みをつくり、橋渡しのようなスタンスをとりたい。
・ 連合会と協力し、何か社会の中で役立つプロダクツを作りたい。
 
   
  審議事項
1. 副委員長と幹事の選出について
  平委員長より副委員長に浜野委員、幹事に大久保委員と滝沢委員が推薦され、承認された。
 
2. 本分科会の今後の進め方について
学術会19期の社会貢献に関連した対外報告によると、男女共同参画、理科離れ、教育問題が大きな位置をしめており、議論されていた事が確認された。(資料3)
○書籍「今なぜ若者の理科離れか」が平委員長より回覧された。
 
1) 女性研究者について(資料4〜7)
  (平)学会の女性会員率は、学生会員までは約20%あるが、正会員になると約5%まで激減している。ただ就職できないという理由だけではなく、正当な理由を解明する必要がある。

(浜野)現在は46の学会の中で20ぐらいでの集計だが、今後もっと増やし年代別や出来るだけ細かく調査して充実した集計をとる。

(平)日本での女性研究者は約11%となり、学会での女性会員と似たような割合で大変低い。

(平)大学における女性教員の割合は、私立・公立大学に比べ国立大学が際立って低い。

(富樫)アンケートは自然科学学会の団体が主となって調査したが、もう数年たっているので定期的にやることが必要とされており、連合はそれに参加する形で現状を把握する意向である。また、今度の連合大会では、女性研究者の子育て後の復帰プログラムや、若手研究者の詳しい現状のアンケート結果などを報告するシンポジウムを最初の土曜日に一般公開する予定。今後学術会議と連携していきたいと思う。
 
2) 理科教育の現状について①(資料8、12)
  ・書籍 旺文社の「中学総合的研究理科」が平委員長より回覧された。
  (平)科学力増進分科会では簡単な百科事典(素養を説明する本)を作り、また同時にその考えを広めていこうとしている。この活動と当分科会の活動をリンクしていきたいと思っている。今後の進め方で議論をしていきたい。
 
3) 理科教育の現状について②(資料1013
  (入倉)理数科教育の問題について第3部役員会で報告したところ、他委員会でも同じ問題を持っている事が分かった。地球惑星科学の観点からの理科教育ではなく、物理、数学と共通の問題意識を持たないといけない。また、どの分野も理科離れだけではなく、大学に入学してくる学生の物理や数学の学力不足も深刻な問題になっている。高校までに学んでいないというだけではなく学生の意識そのものに問題があり、理数科というものに学生が興味を持っていないのではないかということで、それを分析して第3部としてまとめることになった。第3部としては、物を考える視点を教えるということで、学生が興味を持つように、理数科をいかに魅力的にし、理数科を専門とする領域に学生を集めるためにはどうすればいいか考える必要がある。第3部として今後どうするかは検討中だが、ここでの議論を受けて地球惑星科学だけの問題ではなく学術会議全体の問題として提案していきたい。地球惑星科学だけでなく広い視点として意見をまとめる必要があると思う。

(阿部)理数系学会教育問題連絡会は、2004年12月27日に「理数系諸学会からの教育課程と教育に対する改革の提案」を文科省に提出している。それが地学連合にも影響を与え具体的動きを作り出してきた。

(浜野)最新の理数系学会教育問題連絡会の名簿が資料10のP8,9 に載っている。
 
4) 理数系教育の問題点と日本地球惑星科学連合の取り組み
  根本氏より標記についてプレゼンテーションがなされた。
・数学物理生物地学系で提言がまとまって出ていないのは「学習内容」の問題になり、物理も含めた理数系教育に関して大筋では賛成だが各論になると統制が出来ない状況。

●学習内容からの問題点
1. 理科教育の変遷を理解していない。
2. 授業時間数の変遷を理解していない。
3. 内容も危機的になっているのを理解していない。
4. 2006年問題(新学習指導要領)
5. 上記の教育を受けた人(理科を知らない人)が教師になり、より理科離れが広がる。

●提言がまとまって提出されてこなかった背景
1. 各学術学協会での教育系のWGや委員会を持っているのは少数。
2. 各学協会でその分野の事だけを言っている。分野間での協力体制が不十分。
3. 大学に直結する高校教育には口をだすが、小・中学教育にはあまり関与しない。
4. 高校教育で「研究者の育成」と「科学的リテラシーの育成」の2つの意見が対立している。

・学習指導要領は10年毎に改訂されているため、研究者も10年毎に反映させる意見を出していかなければならない。第7次の平成19年の改訂は噂では、平成20年にずれ込むかもしれないとのこと。
・理科の授業時間数は、第2次学習指導要領改訂時(1958〜1967年)では3年間で最低385時間、それに比べ第6次(1998〜2006年)では最大でも280時間になっており、大幅に減っている。4割以上の授業時間・内容が削減されているため、現在の大学入学者は40年前の高校入学者知識しかないともいえる。
・10年毎に指導要領が改訂されているため、年代によっては小学生から高校生まで指導要領の連続性がないので、系統性を持ったカリキュラムを作る必要がある。
・なぜ日本では「科学」ではなく「理科」なのか。「理科」とは終戦後の“防災・環境・社会との係わり・技術・自然科学”の観点が含まれていると思うので、科学と結びつけて内容に組み込む必要があるのではないか。
・教育教員の構成の都合で履修可能科目が決定するのは憲法違反ではないか。一人でも授業を受けたい生徒がいれば授業を開講すべき。
・各分野だけではなく物化生地数学がまとまって提言を出さないと文科省は動けないとのことなので、学術会からまとまった提言を出すことは重要。
・大学進学率が50%超えているため、大学の一般教養も考え、小〜大まで統一しなくてはならないのでは。
・課題別委員会の教師の科学的教養と教員養成委員会で、要望書を文科省へ提出予定。密接な連携をとって活動してほしい。
・現在世論は「研究者育成の基礎」ではなく国民的素養を上げるための「科学的リテラシーの育成」に傾いてきている。
・小学校で理科を背景にした教員数や高校で物化生地の教員数の割合等を文科省に聞いてもデーターがない。その上、地学は入試に必要ないだろうという論理だけ一人歩きしている状況になっている。
・大学進学率が15%(エリート型/昭和37年まで)の時代では、高校は研究者育成の基礎を教える機関であり、大学は養成機関といえたが、15%〜50%(マス型/平成16年まで)になると目的が変わってくる。50%以上(ユニバーサル型)になれば、状況が変わってくる。そのため授業も変容する必要がでてくる。大学院も同様。
・高校教育の多様化を考えた時に学習指導要領の多様化も必要という議論まで踏み込んだ提言が必要だと考えている。
・大学教員は初等〜高校までの教育を把握することが必要
・高校と大学をどうつなぐか検討してほしい。
・大学教育内容に関しても再考する必要がある。
・学会として小・中に関する提言を個人・グループではなく、第3部会として「理科」はこういうものです、研究者は皆こう思っているという提言を文科省に提出する必要がある。
・教師の底上げの提言も必要。
・大阪市の例だが、小学校教師で理系が1割いない状況。9割の先生が文系となる。
・小学校の先生の意識調査では理科を教えるのが嫌だという意見が半分以上あるという。
・教員養成に対しての検討(課題別委員会)とも連携して第3部門として動いていって欲しいと思う。
 
5) 理科教育の現状について③
  (野上)学術会は政府機関の一つであるため、容易に動けない。学術会では提言等を担当し、アクションをおこすのは学協会に協力を得るという2つの料理人という認識をした方がいいのではないか。また理科離れについては、理数系の分野同士ある程度までは味方だが、レベルを超えると敵になる場合もあるのでレベルを整理して切り分ける必要がある。例えば地理を必須にするという意見には歴史の先生はなかなか乗ってくれない。少し地学に的を絞って良いかと思う。

(根本)文系の役人の人に、なぜ理数科教育がこれからの社会で必要なのだということを説得することができないと消滅してしまう。また連合の中では「地学」という名称でいいのかと議論になった。教科、科目、理科という呼び方は時代にマッチしていない。高校―中学―小学校までおろすことを学術会議でやって頂きたい。「理科」を解体して全く新しい教科を作るぐらいの提言を出さないと説得ができないのではと考えている。大学入試との兼ね合いも避けては通れない。

(中井)文科省の人と理数科の人の考える教員養成は全く異なっている。文科省の教育現場は校長が一番であり、予算内でどうやるかを重要としている。そのため免許をもっていれば有能と判断する。非常勤のレベルがかなり低く、高校を卒業するに必要な理数系単位 が40から20に減らされており、体積と重さの区別が出来ない大学生が2,3割いる状況。校長の要請やいじめ問題の解決が優先されているが、いじめ問題を解決するには子供に自信を持たすこと、そのためには面白い授業を増やすことが必要であり、また教科を分かる教員を増やすことが必要だと思います。

(野上)大学教育について地理を専門とする学生を例にとると、専門と全く関係ない就職についている。また学生新聞によると大学での成績を重視する企業は1%未満となっており、なぜ大学3年の成績が出る前に面接を始める企業があるのかという説明がつく。専門性を活かせる就職先が少なく、地学を教える方も思考能力を身に付けさせるため、とか論理的理解の育成などと地学だけではなく他の理由をつけないとむなしくなる時がある。しかし、地学は物理や数学だけでは得られない知的好奇心を持て、また確かめられる達成感が得られるものだと思うので、それを前面に出していきたい。

(阿部)指導要領の改正にあたり、小中高の連携がないと意見が出ている。小学校ではABCの3領域、中学校では1、2分野、高校では選択になっている。そのため、地学を選択しないで高校を卒業し、中学校レベルで終わっているという状況。だから地学教員が非常に少なくなっている。小学校教員は理科2単位で教員になっており、90%の教員が理科を教えたくないと言っている。低学年では理科がなくなり生活科になったため、自然との関わりがなくなった。低学年理科の復活が必要。今回の指導要領では地学は生き延びそうだが、全ての教科を学習するシステムが必要と考える。
* 一体化した教育内容を用意する必要がある。
* 小学校教員免許法を見直す必要がある。
* 全ての教科を学ぶシステムが必要である。
* 地学では一連の理科教育を提案しているので、数学・物理・地理等とすり合わせが現在課題となっている。

(富樫)分科会としては対外報告ができる。

(斎藤)19期第4部での報告を最終的に提出するまでかなり大変だったにもかかわらず、提出した後にどこにどのくらいの影響があったのか分かりにくかった。今後アクションプランを作る時には、対象を明確にしておく必要がある。

(碓井)社会に対して使命を持っていかないとうまくいかないのではないか。安心安全な国づくりが政府の方針だが、理科教育の防災という基礎知識が理解されていなければ安心安全な国は作れないというように、それに対して見合った教育をしていく。地学が持っている地球、地震の仕組み等基礎知識を使って、地域、行政に対して参加出来るようにすればいいのではないか。理科教育の中でも地学教育の重要性を盛り込んでまとめ、報告として持っていく必要がある。

(平)今回のキーワードは「教育」だが、非常に範囲が広い。小〜大まで一貫した教育体系の中で理科教育のあり方、その中での地学の役割をどうしていくべきか。それを踏まえ、科学リテラシーとして地学の素養はどうあるべきか。それらを培って社会に貢献していく。この問題をもう少し続けて議論していきたいと思う。
次回までに各委員から一枚紙で結構ですので、今言ったキーワードで今後どのような議論をしていくかという意見/提案を頂きたい。どういう課題があってどういう方向に向かうのか、対外報告という形、他の分野とジョイントしてどこかに持っていくのか等。

(根本)文系の役人の視点で、安心安全の国づくりに何が必要なのかというと、サイエンスをバックとしない安全となってしまう。背景を持ってこそ自分で考え、動けるという考えを持っていない。また、終戦後に博物館的なものを地学としたので、地学=地質学と見られているので、地学の名称についての議論や科目名の変更についても提言の中に組み込んでいって頂きたい。

(平)文科省等の方も学術会の名のもとで呼ぶことができますので、リクエストがあれば同時に書いてきて下さい。

(根本)オブザーバーとして連合からの意見を伝える場を頂けるなら、今回は小学校の先生でしたので、2回目は中学校の地学の先生を呼べば学校の状況を聞けると思います。

 
  (平)次回の日程調整は5月下旬から6月末までを予定。