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日本学術会議 だより

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**  新生日本学術会議の発足   2005年11月01日) **
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(2005/11/01 JGLVol1.No2より)
日本学術会議第20期第3部幹事  河野 長(東京工業大学・岡山大学名誉教授 )

第20期の日本学術会議総会は10月3日5日に開催された.ここでは,この総会で何が行われたかをまとめ,そのあとで今期の学術会議は前期からどのように変わったかについてご報告したい(以下敬称略).この記事は私個人の印象に基づいて書かれており,学術会議の正式の報告はホームページに掲載される予定なので (www.scj.go.jp),そちらを参照していただきたい.なお,今期選出された地球惑星科学分野の会員は入倉孝次郎,岡部篤行,河野長,平朝彦,永原裕子の5名である.

日本学術会議総会報告
10月3日 
午前のはじめに西ヶ広事務局長が仮議長となり,事務的な説明を行った.議長は会長選挙を行うことを提案したが,これまでに経験のない新会員が多いために,「改革をどのように進めるのか方針を知りたい」,「推薦や立候補を受け付けて,所信を短く発表してもらったらどうか」など意見が出され,投票にはいる前の手続きについての議論がなされた.そのあとバスに分乗して総理官邸へ,大広間で任命式があり会員の代表者が小泉総理大臣から任命書を受け取り,式のあと再びバスに乗り学術会議に戻った.  午前中の議論をふまえて,午後のはじめに(投票に先立って)黒川前期会長から報告を聞いた.この内容は活動報告というより,どのような理念で学術会議の改革が構想され,内閣側との折衝を経てどのような新体制が実現されたかについての説明であった.このあと会長選挙が行われ,4回の投票を経て黒川清前期会長が再任された.ついで吉川元会長の講演を聞いた.この講演は,各国のアカデミーの歴史と機能,学術会議と総合科学技術会議の関係,学術会議の改革と会員選考,国際科学会議(ICSU)など国際団体との関係,など多岐にわたったが,その中で元会長が最も力点を置かれたのは,「学術会議の使命は,政策立案者に中立的な立場から助言を提供することにある」という点であった.「中立的」とは,学説が対立している点は含まず,学界内でコンセンサスが得られているもの,という意味である.このあと総会は議事に入り,まず会員210名の部への所属を確定し,ついで会長と事務側よりこの総会で決定されるべき会則と細則の案について説明があった.  夜はバスで移動した三田共用会議所というところで内閣総理大臣主催による懇談会(立食パーティ)があった.ちょっと驚いたのは,総理だけでなく細田・福田新旧官房長官,棚橋科学技術担当大臣,小池内閣府特命担当大臣など,多くの大臣や国会議員が出席されお祝いや挨拶を述べられたことである.これまで学術会議は内閣や国会では極めて軽視されていると認識していたので,この点は意外だった.これは学術会議の改革により政界からの期待が増していることの表れかもしれない.

10月4日  
午前中総会で新会長の挨拶と副会長の指名.そのあと会則および細則について討論の上採択した.議論があったのは,会則で「幹事会に委任する」という表現があるのが白紙委任に当たるかどうかという点だった.これは国会が決めた法律の中に「委任することができる」とあるのを受けて会則に具体的に定めるための表現ということらしい.  午後は3部に分かれて部会が開かれた.第3部会(理工系)では海部国立天文台長が部長に選出され,続いて副部長と幹事が指名され了承された.3部の議事としては,企画委員会など各種の委員会に出す委員の決定,分野別委員会への各会員の分属の決定,次回の日程の調整などがあるが,この日は各会員の希望を提出してもらい翌日に決定することにした.  夜は会長,副会長,各部役員によって構成される幹事会.ここでは内規など幹事会の権限によって制定されるべき各種の規則についての提案説明と, これから約1年間の会議予定が示された.

10月5日  
午前中予定を変更してまず総会が開かれ,主に連携会員をどう選ぶかにつき会長の講演と質疑が行われ,また4月10日−12日に総会を開くことを決定.そのあと,分かれて昨日の部会の続き,3部では部長から各種委員会への3部からの委員候補が示され了承されたほか,次回の3部会を11月24日午前に開くことを決定.昼前の短い時間を使って各分野別委員会の予備的な会合が開かれた.  午後は企画委員会など各種委員会が順次,または平行して開催された.幹事会は昼食時と最後に開かれ,昨日提示された各種の規則を承認したほか,委員会の構成の決定,外国派遣の承認,今後1年間の委員会等の日程の決定を行った.

以上が今回の総会および同時に開かれた部会などの概略である.

何がどう変わったか
学術会議を規定する「日本学術会議法」は昨年4月に大改正された.今回の総会ではこの法律に準拠する形で規則や内規を定めた.これにより今期からの学術会議は,これまでとはかなり違ったものになっている.変更点のうちで主なものは(1)会員の定義と選出方法,(2)学会との関係,(3)組織の再編成,(4)幹事会への大幅な権限委譲,などである.ここからは,学術会議が今までの体制からどう変わったか,また今後どのようなことが予定されているかについてまとめたい.

会員と連携会員  
会員数は210名でこれまでと変わらない.しかし選出方法はこれまでの学会推薦から根本的に変わった.今期の会員の選出に当たっては,吉川元会長を委員長とする会員候補者選考委員会が作られ,これが選考を行った.具体的には,全国の学協会や研究機関から推薦を求め,その結果得られた6000人強の名簿を基礎として数段階の絞り込みを行い,最終的に210名を選んだわけである.連携会員の選考はこれから行われるが,その際にもこの名簿のかなり絞り込んだあとの分を参考にするやり方が考えられている.しかしこれは新体制発足のための臨時的な処置であり,過渡的なやり方と考える必要がある.  黒川会長が今回の総会で何度か話されたことからみると,定常的な段階に達したあとの会員選考は次のようになる.まず大原則は,これまで学会からの推薦を元に選ばれていたのを廃し,コオプテーション,メリットベースで選ぶという点である.会員または連携会員は年に2人まで新会員候補者を推薦できる.一回推薦されると数年間は候補者の名簿に残る.任期満了や定年(70歳)で会員がやめ欠員が出たときに,これらの候補者のうちから次の会員を選ぶ. 会長が強調されたのは会員と連携会員の間に上下関係はないという点である.今回の改革に当たり,学術会議側は以前の研連委員全体とほぼ同規模の約2000人の会員を要望した.しかし行政改革の一環であるから,こんな定員増になる要求は当然通らなかったが,その代わりに連携会員の設置を法律で認めさせることに成功した.学術会議がこれからやっていこうとする様々な活動には会員200名だけではどうしても足りない,もっと多数の人の参加が必要だということである.連携会員は会員候補のプールとも考えられる.また会員をやめた人も連携会員として活動を続けてもらうというねらいもある.

学会との関係  
これまでの研連は各学会などと直接対応しているのが普通だった.その結果研連の数は200近くにもなり,細分化や影響力の低下などの弊害が言われていた.特に地球惑星科学に関する研連は非常に多く,またそのほかにも国際対応の要求から多数の委員会が置かれ,しばしば問題にされてきた.今期から研連は廃止され,かわりに30の分野別委員会が置かれた.この30という数は確定したわけではないが,今後大幅に変わることはあり得ない.我々の分野は「地球惑星科学」として一つにくくられた.  分野別委員会は直接学会等に対応するわけではないというのが学術会議の基本姿勢らしいが,もちろん学会とちゃんと連絡を取らなければ何事も進まないであろう.ただしこれまでのように個々の学会と直接対応することは避け,地球惑星科学連合を窓口として連絡を取りたいと5人の会員の意見は一致している.  各分野別委員会の下には必要に応じて分科会をおくことができる.分科会についてはいくつぐらいという特別な規定はないようだが,会員と連携会員をあわせた2000人プラスの会員が,分野別委員会と分科会をあわせて年3回ぐらい出席する程度,という予算上の制約から数が決まるのではないかと思われる.分野別委員会レベルで考えても,多数あった地球惑星科学の研連を移行して分科会を組織するという解はなさそうである.

組織と運営体制  
これまで7部があったが,今期から人文社会系,生命科学系,理工系の3部制になった.委員会としては,常置のものに機能別委員会と分野別委員会(前述)が置かれる.前者のうちでは,これまでに企画,科学者,科学と社会,国際,会員選考の5つの委員会が発足した.常置委員会のほかに問題に応じて期限をつけた課題別委員会を置くことができるとしているが,これはまだ設置されていない.  総会は年2回(4月,10月)開催されるだけなので,問題が起こったとき事態に迅速に対応するためにこれまで運営審議会が置かれていた.今期からこれは幹事会に変わり,しかもかなりの事項が(総会でなく)幹事会で決定できるように規則が定められた.幹事会は会長,副会長3名,各部の部長,副部長,幹事2名ずつの計16名で構成され,大体月1回の割合で会議を開く.幹事会の権限が大幅に強化された結果,幹事会が学術会議の執行機関的な役割を担うのではないかと予想される.現在の幹事会のメンバーは以下の通りである(専門については,どの分野別委員会に主に属するかにもとづいている).

終わりに      
今期の5人の会員のうちでは,入倉さんを除く4人にとっては会員は全く初めての経験になる.しかも学術会議は新しい体制に移行したために,これまでの会員の方々から伝えられた知識も通じないことが多い.これからどうやっていくのか右も左もわからない,というのが個人的感想である.しかし新体制の結果,旧来のしがらみにとらわれることなく最も良いやり方を探すことができる,というプラスの面も存在する.何とかこの機会を有効に生かし,地球惑星科学の今後の発展に資するような活動をしたいと考えている.未熟ですが,そのためにできるだけ働くつもりですから,どうかご助力ください.