環境地質学専門委員会参考資料

 

地球科学技術者資格制度の確立−持続可能な社会と地球科学の発展に向けて−

地質科学総合研究連絡委員会

環境地質学専門委員会

 

地質技術者は,古くから資源の探査と開発や社会資本の建設,環境保全,自然災害の軽減と復旧などを通じて,国土の基本科学の実践者として社会に貢献してきた.さらに,地質技術者は,社会的な業務とともに,活断層調査,火山活動調査,深層ボーリング調査,大規模地下構造調査など,純学術的調査研究の実働部隊として重要な役割を分担してきている.すなわち,地質技術者は,地質学の社会への貢献とともに,純学術的研究においても不可欠な存在となっている.

現在,わが国の地質技術者の資格は,技術士の応用理学部門の1選択科目として設定されているが,その重要性と需要に鑑みるに,明確な地質技術者として位置づけることが是非とも必要である.実際,応用理学の地質科目には,毎年70名から120名が合格し,応用理学全体の合格者の3/4以上を占めている.さらに,諸外国の状況をみると,米国,カナダ,英国,豪州では,いずれも,工学技術者資格(Professional Engineer, Chartered Engineer)の他に,法的に確立された地質技術者資格(Professional Geologists, Professional Geoscientistsなど)を別個に有しており,地球科学的業務の計画,実施,報告書作成を法的根拠をもって認可している.これは,地質技術者が工学技術者の業務範囲をこえて,地球科学の基本的な原理を適用して地球の調査を行うことに専念することを可能にしている.現在のところ,わが国の技術士の応用理学部門(地質)の地質技術者には,かなりEngineeringに寄った技術者と上記のProfessional Geologistに近い技術者とが受け入れられる体制になっている.しかしながら,近年は,技術者教育認定機構(JABEE)による技術者教育認定制度が本格化し,JABEE分野と技術士部門との対応が検討され,技術士自体が工学技術者のみの資格としてみなされることになりかねない状況が懸念される.地質技術者の教育プログラムも,「地球・資源および関連分野」ですでに5プログラム認定され,認定数はさらに増加する見込みであるが,わが国の地質技術者が過度にEngineeringを志向したもののみになることなく,広くProfessional Geologist,さらに,Professional Geoscientistとして活躍できる技術者資格を確立することが必要である.こうした資格制度の確立により,地球科学者と技術者とが車の両輪として機能し,新たな人材を生み出し,地球科学全体を発展させ,その成果を社会に還元することが可能になる.これはわが国のように地質構造的に極めて複雑で,地質災害の多発する国にとっては不可欠なことである.

 

資料:

「諸外国における地質技術者資格と教育の実情とわが国におけるあり方シンポジウム資料集」.地質科学総合研究連絡会,地質学研究連絡委員会,資源開発工学研究連絡委員会,日本応用地質学会,日本地質学会,日本地下水学会,資源・素材学会主催.20031225日,於日本学術会議.千木良雅弘(2004)地質科学と地質技術者−欧米諸国の現状 −地質科学総合研究連絡委員会環境地質学専門委員会の活動から−.学術の動向、77677