セクションサイエンスボード −宇宙惑星科学セクション
宇宙惑星科学分野の現状とビジョン
宇宙惑星科学の目標
宇宙惑星科学の究極の目標は、星・惑星系の形成と進化の法則を理解することにある。とりわけ、太陽系における地球とそこに棲む生命の位置づけを経時的に把握すること、さらに、宇宙における太陽系自体の普遍性と特殊性を理解することである。そのため多様な手法が用いられる。(1)探査により、太陽、太陽系内の惑星や衛星、小天体、惑星間空間の現在の姿を明らかにすること、(2)隕石、惑星間塵、彗星などの地球外物質の分析により、太陽系の形成期に凍結された情報を読み出すこと、(3)計算機シミュレーション等により多様な星・惑星形成過程を再現・理解すること、(4)これらのことを支配する基礎過程の物理・化学を実験や理論を通じて追求すること、である。
最近の進歩
今後のビジョン
宇宙惑星科学における今後の重要な課題は、惑星系起源・進化の多様性の実証的な理解、惑星や惑星間空間のダイナミクス・物質循環・進化についての理解、さらには工学的・実用的な側面への応用にある。系外惑星研究の進展は、宇宙における生命すなわち宇宙生物学という、新たなサイエンスの重要分野を切り開き、惑星科学・天文学のみならず、大気物理、大気-海洋相互作用、生命進化史などより広い分野を巻き込み発展しつつある。惑星大気・磁気圏探査の進展は、太陽系内のさまざまな惑星探査計画に広がり、火星においては太陽風による大気のはぎとり、水星においては希薄大気構造および惑星磁気圏、木星においては巨大磁気圏における粒子加速等の課題に発展している。それらはさらに惑星大気や磁気圏物理の普遍性と特殊性の解明という次の課題に結びついている。探査やサンプルリターンにより持ち帰られる宇宙物質の研究は、惑星形成論や天文観測との連携により、実証的な惑星系進化論に発展しつつある。またそれを支える室内実験の重要性も浮かび上がってくる。このように、今後の宇宙惑星科学は、探査、理論、分析、実験などの多様な研究の相互作用により進展するといえる。それを保証するのは、それぞれの分野・研究手法における研究の進展と同時に、大学間、大学とJAXAをはじめとする研究機関、天文や生命などの分野との連携である。 |