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セクションサイエンスボード −宇宙惑星科学セクション


宇宙惑星科学分野の現状とビジョン
宇宙惑星科学の目標
宇宙惑星科学の究極の目標は、星・惑星系の形成と進化の法則を理解することにある。とりわけ、太陽系における地球とそこに棲む生命の位置づけを経時的に把握すること、さらに、宇宙における太陽系自体の普遍性と特殊性を理解することである。そのため多様な手法が用いられる。(1)探査により、太陽、太陽系内の惑星や衛星、小天体、惑星間空間の現在の姿を明らかにすること、(2)隕石、惑星間塵、彗星などの地球外物質の分析により、太陽系の形成期に凍結された情報を読み出すこと、(3)計算機シミュレーション等により多様な星・惑星形成過程を再現・理解すること、(4)これらのことを支配する基礎過程の物理・化学を実験や理論を通じて追求すること、である。

図1 系外惑星の軌道長半径と質量の関係(2009年7月1日現在)。数AU付近の巨大惑星は理論が予想する大型惑星の形成領域に合致し、0.1AU以内の大型惑星(ホットジュピター)は、形成後円盤内を移動してこの位置になったと考えられる。



図2 小型衛星“れいめい”が北米上空約650kmからとらえた、高度110km 付近のオーロラ発光の約15秒間の変化。一枚の写真の領域は70km四方。



図3 探査機“かぐや”により決定された月の重力異常。左は表側、右は裏側。赤が強く、青が弱い。3種類の異なるタイプの重力異常の盆地が存在する。

最近の進歩
最近の画期的な進展として、系外惑星の発見が挙げられる。主星のすぐそばを回る巨大惑星(ホットジュピター)や長楕円軌道をもつ巨大惑星といった、太陽系とは大きく異なる惑星系の存在の発見により、宇宙における惑星系存在の普遍性が明らかになり、太陽系を惑星系の1つとしてその特徴を探るという新たな視点が導入された。さらに,従来の太陽系形成の標準モデルを超えて,系外惑星の多様性をも説明する新たな汎惑星系形成論が組み立てられつつある。これにより、系外惑星系において海を持ちうる(すなわち地球型生命の存在しうる)惑星の存在が予測可能となりつつある。
もう一つの大きな進展は、惑星・小天体・惑星間空間探査である。とりわけ、日本において固体惑星探査が実現されたことは、宇宙惑星科学が新たなフェーズに入ったことを意味する。「あけぼの」、「ようこう」、「GEOTAIL」に続いて、「れいめい」、「ひので」が打ち上げられ、太陽からジオスペースへのエネルギー輸送、太陽フレア・サブストーム・磁気嵐等巨視的構造の時間変化、粒子加速過程、磁気リコネクションによる太陽フレアや全地球的なオーロラの発生などを明らかにしつつある。固体惑星探査では、「はやぶさ」による小惑星イトカワ探査は、衝突破片の再集積(ラブルパイル)という小惑星モデルを実証するとともに、世界で初めて月以外の太陽系天体の試料が獲得された可能性を残している。「かぐや」による月探査は、世界で初めて全球の詳細画像や地形図、重力や放射性元素、磁場の正確な全球分布などを取得し、今後の月探査に大きな貢献をするとともに、二分性の起源やマントル組成に関する新たな知見を示した。さらに、アメリカによるスターダスト計画により持ち帰られた彗星の塵の分析結果は、初期太陽系の高温過程、ガス円盤における大規模な物質移動など、理論的には不明確であった事実を明らかにし、今後の始原的小天体探査の課題を明確にした。
このほか、多点ネットワーク等の地上観測によるジオスペース・超高層大気科学の進展もめざましい。北極、中緯度及び赤道に設置された大型レーダー、地磁気・光学・GPS・短波レーダー観測網、により、地球の磁気圏や電離圏の3次元的な描像がさまざまなスケールで得られるようになった。これらの知見は、惑星大気変動機構の普遍的な理解に役立つだけでなく、ジオスペースの環境科学という新たな分野を形成していくであろう。

今後のビジョン
宇宙惑星科学における今後の重要な課題は、惑星系起源・進化の多様性の実証的な理解、惑星や惑星間空間のダイナミクス・物質循環・進化についての理解、さらには工学的・実用的な側面への応用にある。系外惑星研究の進展は、宇宙における生命すなわち宇宙生物学という、新たなサイエンスの重要分野を切り開き、惑星科学・天文学のみならず、大気物理、大気-海洋相互作用、生命進化史などより広い分野を巻き込み発展しつつある。惑星大気・磁気圏探査の進展は、太陽系内のさまざまな惑星探査計画に広がり、火星においては太陽風による大気のはぎとり、水星においては希薄大気構造および惑星磁気圏、木星においては巨大磁気圏における粒子加速等の課題に発展している。それらはさらに惑星大気や磁気圏物理の普遍性と特殊性の解明という次の課題に結びついている。探査やサンプルリターンにより持ち帰られる宇宙物質の研究は、惑星形成論や天文観測との連携により、実証的な惑星系進化論に発展しつつある。またそれを支える室内実験の重要性も浮かび上がってくる。このように、今後の宇宙惑星科学は、探査、理論、分析、実験などの多様な研究の相互作用により進展するといえる。それを保証するのは、それぞれの分野・研究手法における研究の進展と同時に、大学間、大学とJAXAをはじめとする研究機関、天文や生命などの分野との連携である。
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