発表内容
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日本地球惑星科学連合の教育問題への対応
2005年5月25日に日本地球惑星科学連合が設立されました.日本地球惑星科学連合については,設立時に幕張メッセ国際会議場にて記者発表を行いましたので,詳しくはその際に配布した資料(資料2)をご参照下さい.
日本地球惑星科学連合において,地球惑星科学に関する教育問題の検討は最重要課題のひとつであることから,教育問題検討委員会が設置されています.教育問題検討委員会は,日本地球惑星科学連合へ加盟する25の学会から選出された委員によって構成されており,現職の学校教員と研究者とが含まれます.教育問題検討委員会は,初等・中等・高等教育を含む生涯教育における地球惑星科学教育全般に関わる諸問題を検討し,文部科学省や一般社会に対する提言の原案を作成する役割を担います.今回の提言も,この委員会で検討されまとめられたものです.
*日本地球惑星科学連合設立以前にも,関連した活動として,地球惑星科学関連学会合同大会(以下,合同大会)において,2000年〜2001年にユニオンセッションの一環として「地学教育セッション」を,2002年からはレギュラーセッションとして「地学教育セッション」を開催してきました.また,2003年には「地球惑星科学関連学会連絡会」の下部委員会として「地学教育」委員会が設置され,
2003年〜2005年には特別公開セッション「地学教育」を開催し,地学教育問題に関する議論を行うなど,さまざまな活動を行ってきました.
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今回文部科学省に提出した提言について
次代を担う子どもたちは,地球環境問題,自然災害,資源・エネルギー問題を理解し,自ら考え行動できる力を持つ必要があります.これらの問題は様々な現象が相互に絡みあっているために個別の科目,物理・化学・生物・地学,の枠だけで考えるには無理があります.また,全ての人が生きるために知っておくべき事ながら,その複雑さのため,中学校までの理科では学びきれない時代になっています.
そこで,提言の趣意に記した通り,我々人類と地球の未来のために,後期中等教育段階において,地球人として全ての人が身に付けるべき必要最小限の科学リテラシーを選定した新科目の創設を提言します(資料1参照).
(a) 本提言の意義
本提言で提案する新科目が持つ意義は,次の通りです.
1)
理系進学者,文系進学者,後期中等学校(高等学校)卒業直後から職業に就く者,いずれを問わず,環境や防災を理解するのに必要な最低限の知識を獲得させることができます.
2)
理系の研究者や科学者,技術者などの専門家にはならない人にとって,地球との共生を理解することで生命を考える知識,考え方が身につく学習項目を網羅しています.
3)
理系の研究者や科学者,技術者などの専門家になる人にとって,様々な分野の必要最低限な学習項目を網羅しています.本科目を学ぶことで,選択科目として学ぶ物理・化学・生物・地学への学習に対する強い動機付けを得ることができます.
(b) 本提言の内容
人類が直面している諸問題を正しく分析し,社会に対して科学の果たすべき役割を科学的に考えられる人材の育成をはかるため,また科学と技術との関係を正確に理解する能力を身に付けるため,次の3つの観点で内容を構成しました.
1) 宇宙,地球,生命は長い時間をかけて現在の姿になっている事を知り,時間的・空間的広がりの中における人類の位置付けを考えることができる人になること.
例えば,「三尺流れて水清し」のように黒潮にゴミを投棄すれば片付いたと考える人がいます(実際に投棄している例がある).しかしながら,太平洋ではこのゴミが海流に乗り,北緯20度から40度に「ゴミ集積ベルト」を形成することが判明しています.このようなゴミ投棄が地球環境に与える影響を考えられる人になるためには,時間的・空間的な概念を知ることが必要です.フロンガスによるオゾン層破壊もこのような概念を知らずに起こした一例であるといえます.
2) 物質,生命,エネルギーといった自然科学の基礎的な概念についての理解を通して,全ての自然現象は相互に密接に関連していることを知る人になること.
例えば,我々のエネルギーの源は太陽光による光エネルギーであり,植物が光合成によって合成した有機化合物に依存しています.我々は有機化合物の形で貯えられたエネルギーを食物として体内に取り入れ,生きるために消費しています.
3) 自然との共生について,科学的な判断および総合的な考察ができる人になること.
例えば,良い昆布を育てるためには,森を育てる必要があることや,かつてのハタハタ漁や鰊漁にみられたような漁獲高の激減を招かない漁の仕方が必要であることを,科学の見方により理解することが出来るようになります.
以上の3つの観点を理解できるようになるために,資料1の表1に示す項目を章立てしました.章立ての柱として3本の軸をおきました.1つ目の軸は時間,2つ目の軸は空間,3つ目の軸は多様化としました.これら3つの軸のどこに人類が位置しているかを知ることで,過去,現在だけでなく未来を考える力が養えると考えます.
(c) 期待される成果
提案する新科目が実施されることにより,提言にある「期待される成果」(資料1)が得られると考えています.そのためには,科目を超えた教員間の協力や,現職教員の研修の充実,および本科目を十分に教えられる教員を養成するための教員養成方法の導入が必要になります.日本地球惑星科学連合は,小中高大連携教育への講師派遣に関する協力,現職教員の研修への協力,教材提供などを行っていく意向です.
(d)
新科目の初等・中等教育課程における位置付け
全ての人が知っておくべき自然の見方,考え方を身につけ,総合的に理解できるようになるためには,後期中等教育(高等学校)での理科教育が重要であると考えています.そのため,本科目は,小学校,中学校等の後期中等教育課程までに積み重ねてきた理科の教育内容に基づき,理科的な考え方を総合的に理解できる力を育成する科目としての性格も持っています.また,進級後に選択理科として物理・化学・生物・地学を学ぶための基礎としての性格も併せて持っています.
よって,本科目は全員必修であることが望ましく,大学で教養を身に付ける基礎となる科目であることより,センター試験等では理系・文系を問わず必修科目とする必要があると考えています.
● 教育問題に関する今後の検討事項
日本地球惑星科学連合では,今後,地球惑星科学の教育に関する以下のような懸案事項について議論・検討を行い,政策立案・提言作成等を行っていく所存でおります.
初等・中等教育に関する諸問題
・センター試験の物理と地学とが同時間帯に設定されている問題
・今回提案した科目をセンター試験において必修化すべき問題
・次期学習指導要領における教育課程での理科の位置付けと領域の配置に関する問題
・次期学習指導要領に関する問題 -
小学校教科「生活科」が理科教育に与える影響にかかわる問題
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今回提案した科目と小学校・中学校教科「理科」との整合性にかかわる問題
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今回提案した科目を土台とするその後の選択科目「地学」にかかわる問題
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理科の学習を進める上での教育条件整備にかかわる問題
・初等・中等教員養成に関する問題
・初等・中等教員の現職教員の研修に関する問題
高等教育に関する諸問題
・2006年問題(新学習指導要領下で学んだ学生が大学に入る初年度)
・2007年問題(数字上の大学全入時代の到来)
・2010年問題(新学習指導要領下で学んだ学生が大学院に入る初年度)
その他 |