日本地球惑星科学連合「将来構想委員会」中間2次答申

 

平成20年2月25日

委員長 松浦 充宏

I. 発足の経緯

 

日本学術会議の抜本的な組織改革に伴って,群雄割拠状態にあった地球惑星科学関連の学協会は,大同団結せざるを得ない状況となった。そこで,十年余に及ぶ合同大会(地球惑星科学関連学会合同大会)開催の実績を背景に,関連学協会を束ねる組織として発足したのが,日本地球惑星科学連合である。従って,現在の連合は,定期大会(日本地球惑星科学連合大会)を通じて関連分野間の研究情報の交換を促進すること及び国や社会に対する情報流通の窓口的役割を果たすことを目的としている。
 しかし,今や50近い学協会の加盟により日本の地球惑星科学を代表する組織となった連合は,国・社会レベルにおいても正式に認知される必要がある。そのために避けて通れないのが,平成20年度に施行される新しい法律の下での法人化である。法人化に際しては,法人の目的,組織形態及び活動を明確に定めなくてはならない。このことは,必然的に窓口組織としての連合から活動主体としての連合への転換を意味するので,連合の将来構想抜きに法人化を考えることはできない。
 本委員会の使命は,運営会議議長の諮問により法人化後の連合の在り方を検討し,その実現に向けた基本計画案を答申することにある。
 

 

構成メンバー

松浦充宏(委員長),大谷栄治(副委員長),濱野洋三(副委員長),田近英一(幹事),中村正人,石井守,本蔵義守,丸山茂徳,中島映至,岡部篤行,北里洋,末広潔,

谷上美穂子(オブザーバー)

 

検討事項

1.組織の強化:1)法人化後の形態,2)財政基盤の確立,3)事務局の強化

2.基本理念の明確化と具体化:1)理念/目的の再設定,2)学問分野と組織の構造化,3)地球教育の在り方とアウトリーチ,4)国/社会への提言と情報発信

3.事業の拡大:1)連合大会の継続と発展,2)国際会議の支援,3)出版事業

4.国際連携の推進:1)国際学協会への対応,2)海外連合学会との連携

5.その他

 

委員会の開催

第1回:平成19年 8月 2日(15時—18時)東京大学理学部1号館710号室
第2回:平成19年 9月17日(14時—17時)東京大学理学部1号館747号室
第3回:平成19年10月20日(14時—18時)東京大学理学部1号館747号室
第4回:平成19年11月27日(14時—17時)東京大学理学部1号館747号室
第5回:平成20年 2月16日(11時—14時)東京大学理学部1号館747号室
 

 

II. 法人化後の連合の在り方

 

法人化後の連合の在り方を検討するに当たって,連合の発展が加盟学協会の活性化を促し,我が国の地球惑星科学が将来的には世界の中の一つの基軸となり得るような組織・体制の確立を基本方針とした。また,地球惑星科学の重要性と有用性を社会に認知させるためには,地球惑星科学分野全体の結束が不可欠であり,各学協会の独自の活動と連携しつつ,連合を中心とした分野全体の活動を強化する方向で検討を行った。連合の在り方に関する以下の提言は,「全体の発展なしに部分の発展はなく,部分の活性化なしに全体の活性化はない」という基本認識の下に検討されたアクションプランの中間2次答申である。

 

0. 連合の目的

連合は,我が国の地球惑星科学コミュニティーを代表し,国際連携,社会への情報発信,関連分野の研究活動と情報交換の促進等を通じて,地球惑星科学の振興と普及に寄与することを目的とする。

 

1.  組織の強化

日本の地球惑星科学を代表する組織として正式に認知されるため,可及的速やかに「一般社団法人日本地球惑星科学連合」の申請ならびに公益社団法人認定の申請を行う。その準備作業として,本中間2次答申に基づく定款案の作成を進める。法人化後の連合の在るべき組織形態の概略を図1に示す。法人の運営は理事会,議決は社員総会とする。社員は代議員(個人)と団体会員(加盟学協会)で構成し,代議員は定められた区分に従って登録した正会員の中から区分ごとに選出する。代議員の中から選出された理事が理事会を構成し,互選により代表理事(会長)を選出する。理事会は各種委員会及び学協会長会議を組織する。理事は基本方針及び対外的問題に関して学協会長会議に諮問する。

 

2. 基本理念の明確化と具体化

法人化後の連合は,窓口組織から活動主体へ転換する必要がある。連合の学術活動を積極的に展開するため,地球惑星科学全体をサイエンスの観点から区分した以下の5つのセクションを設け,学術活動の主体としての自律的機能を持たせる。

 

 

宇宙惑星科学
太陽系の諸天体(太陽,惑星,小天体)の起源と進化の解明,現在の状態(内部構造,表層環境,大気・プラズマ環境)とダイナミクスの理解,さらには宇宙空間及び系外惑星の探求を目指す研究分野。

大気海洋・環境科学
現在及び過去の大気・海洋・表層環境とその変動(気象現象から古気候変動まで)のメカニズムを解明し,将来の地球環境の変動の予測に向けて,大気,海洋,陸水,雪氷,土壌,植生とそれらの相互作用の理解を目指す研究分野。

地球人間圏科学
地球表層空間における自然と人間の相互作用とそれに起因する諸問題(自然災害,農村・都市環境,土地・資源・エネルギー利用など)を,調査・観測,データ分析,モデルにより多面的に研究する分野。

固体地球科学
固体地球(地殻,マントル,中心核)の構造と物性,進化と変動の歴史,現在のダイナミクスを,地球物理学的,地質学的,物質科学的,地球化学的な手法を用いて,総合的かつ統一的に解明する研究分野。

地球生命科学
地球上の生物を対象に,その起源と進化,絶滅の原因とプロセス,形態や生態の多様性を,地球環境の進化・変動との関わりという視点に立って,地球惑星科学及び生物学の両側面から理解を目指す研究分野。
 

 

※)正会員登録を行う際の区分(登録区分)としては,上記のセクション名を用いる他,特定の分野にとらわれず広く地球惑星科学全般に関心のある教育関係者,ジャーナリスト,官公庁・民間企業の関係者等を対象とする「地球惑星科学総合」を設ける。なお,正会員登録時に活動の場としての区分を複数選択できるが,代議員を選ぶための主たる登録区分は一つとする。

各セクション所属の正会員は,セクション代表を選出する。セクション代表は,連合全体委員会対応の委員会を組織し,大会セッション編成,セッション学術誌の編集,各種候補者の推薦等,学術活動面での実務を行う。
 

 

3. 事業の拡大

各学協会の独自活動としての秋季大会と分野全体の活動としての連合の春季大会を両輪として,地球惑星科学の活性化を推進する必要がある。連合大会を発展させるために,セクション制を導入し,連合大会への参加学協会の拡大を図る。また,地球教育問題を含め,セクションを横断するフォーカスグループを立ち上げ,ユニオンセッションの充実を図る。国際セッションの充実は,世界の中の一つの基軸となるためにも,積極的に推進する必要がある。
 学術誌の刊行を含む出版事業の展開は,将来の大きな課題として取り組む必要がある。社会への情報発信という面からみても,欧文学術誌の刊行は,公益法人化に際してクリアしなければならない差し迫った問題である。連合大会国際セッション等の発表論文を対象にした電子レタージャーナルの刊行等は,実現性が高く,早急に検討すべきである。
 

 

4.検討中の事項と基本認識

1) 財政基盤の確立
  河野学術会議会員による海外学術団体の財政状況調査・分析結果に基づき,連合大会の充実・発展により大会参加者の飛躍的拡大を図るのが最も着実な道であるとの結論を得ている。
2) 事務局の強化
  財政基盤の確立と連動した問題であり,連合大会の発展/事業の拡大に応じ,段階的に進めていく必要がある。
3) 地球教育の在り方とアウトリーチ
  大局的見地に立って,小・中・高レベル,大学(学部・大学院)レベル,社会一般レベルでの地球教育の在り方を総合的に検討する必要がある。
4) 国/社会への提言と情報発信
  日本学術会議との連携強化に向けて具体的仕組みを検討する必要がある。
5) 連合情報システムの強化と活用